「ヒトラー 〜最期の12日間〜」

原題:Der Untergang
見てきました。

個人的にはむしろ、来年公開のゾフィー・ショルのほうが見たいのですが*1、しかし、これはこれで見たかったので。
邦題はヒトラーを前面に出していますが、彼ばかりでなく、その周辺の……まあ何というか敗軍の壊れたさまやらなんやらも描かれています。ホロコーストに関して言葉だけで済ましていることに対する批判は当然あるでしょうが、それを描き出してしまったら、もう他の事は描けないので、私はこれはこれでいいんじゃないかなと思います。
これがドイツ語で、ドイツ人によって製作されたことの意味は相当大きいのではないでしょうか。
わたしは、何だかこれを見ている間じゅう、とてもかなしかったです。彼らは、もしかしたらヒトラー本人ですらも、もうほとんど勝利を信じていないのに、だからこそ、信じたがっていて、くるったように縋っているように見えたのです。
そして、ヒトラーは狂人ではありませんでした。普通の家庭人としての顔も持っていました。この映画ではそう描かれています。狂人だから虐殺が出来たのでは、ないのです。本当は、狂気に陥りきっていない人間、美しさと正しさを信じて冷静にことをすすめることの出来る人間の方が狂人よりよほど残酷になれることがあると認めておかなければならないのだと思います。絶対的な悪人がいて、その人だけが悪いなんてそんな単純な話でないことをよく覚えておかなければ。
かれは、家庭人としては、まっとうでありながら、同時に総統として君臨し、国民を見捨て、信念に基づく虐殺をおこなった。そういうことです。
ヒトラーは、はじめ、合法的に国家のトップに立ったんです。議会で選出されたんです。別に驚愕の新事実というわけではありませんが、それを忘れたらいけないのだと思います。

なんにしても、映像で見ると衝撃がありますね。上記のようなことだけでなく、いろいろなことを考えさせられる映画です。監督の勇気に感謝しなくちゃいけませんね。

ドイツ映画祭では、『青い棘』*2とか『ゾフィー・ショル−最期の日々(仮題)』*3とかもやったという話がドイツ語会話NHK)で紹介されていて、出来ればそれらも見てみたいなぁと思いました。

*1:ドイツ映画祭でやったらしい。いいなぁ東京

*2:原題:Was nützt die Liebe in Gedanken 今秋Bunkamuraで公開ですって。

*3:原題:Sophie Scholl − die letzten Tage